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目標による管理: 目標の設定について

11.02.01
SAVS会員 ホロンマネジメント研究所 本澤 邦彦

 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海)という本は、発売6ヶ月で100万部突破という凄い勢いで、世の中にマネジメント概念を広めています。女子マネージャーは「マネジメント」が野球部を強くするのに役立つことを知り、部員たちと一緒になって甲子園を目指すという青春ストーリーです。そこで今回は「マネジメント」に関係の深い「目標による管理」の話をします。

 ところで「マネジメント」の意味については、普通に「組織を管理すること」や「組織の管理者」という意味に理解します。要は組織をまとめて運営・経営するということですが、そのためには組織の「目標」が必要になります。ある野球部の目標として「甲子園に出場する」を掲げた場合を考えてみましょう。甲子園に出場できるような強いチームになるためには、一人独りの選手が強くなることが前提です。そのためには更に、各選手が具体的な訓練を目標として励むことが必要です。要するに、組織に貢献するためのメンバー各自の「具体的な行動目標」が重要になるのです。

 一般に目標というと、たとえば「売上高10%アップ」のように「数値目標」がイメージされます。しかし、この数値は目標達成の評価基準を示しているだけで、目標実現への道筋は示していませんから、それだけでは単なる御題目に過ぎません。必要なのは、その目標を実現するために何を為すべきかという「具体的な行動目標」です。組織の成員には、各自の立場で「自分は○○をする」と宣言して実行することが求められます。そして「○○を実行した」のであれば、たとえ数値目標に届かなかったとしても、個人の目標は達成されたものとして評価されるべきです。もし個人の行動目標が適切に設定されているならば、その集積としての組織の目標も当然に達成されるはずだからです。

 このように「目標による管理」はマネジメントの中核をなす重要な手法ですから、個人の働きを評価する場合にも目標の達成度が使用されます。その場合、評価の公正を期す考えで、客観的な「数値目標」を設定するのが一般的です。しかし、数値目標は号令するだけで個人に働き方までは指示しないので、やり方が不十分で結果的に目標達成に至らないことが多くなります。そもそも大抵の仕事は各人が役割を分担して行うものだから、数値目標を個人に分配すること自体に無理があります。それよりも組織に貢献するために、各自が行うべき「行動目標」を自ら設定することの方が大切です。たとえば「弱点克服のために、自分は毎日素振り千本を実行する」というような具体的な行動目標にこそ価値があるのです。


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