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随想の広場

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「徹する」と「続ける」

11.10.17
SAVS会員 川田ビジネスクリエーション代表 川田 國博

8月上旬、朝から真夏の太陽がギラギラと照りつける日であった。大阪府大東市のある中小企業の製造現場を訪問する機会を得た。

訪問の目的は同社の5S活動を見学することであった。その企業は、金属板の溶接&板金加工組立業で従業員数は、約20名とのこと。始業前の全員参加の清掃から始まって、その日の作業計画の確認は手書き工程管理板を囲んでのミーティングの後、テキパキと持ち場に分かれての作業が始まった。
その中を見学させて頂いた。日頃の取組みを訥々と真剣に説明する熱意に満ちた態度に新鮮な感銘を受けた。来客のために、忙しい担当業務の時間を割いての案内である。全員参加、全部門、全業務まで徹底した取組みの姿がそこにあった。現場の隅々にまで、本当に5Sが浸透している。現場のあらゆる機械や作業台等には容易に移動ができる工夫がされ、治工具類は見事に定位置に置かれ、今どの工程で誰が使っているかもわかる。その日の作業に適したレイアウトが短時間で容易に出来上がる。

「現実の姿は、いかなる言葉をも、遥かに越えて雄弁である。」
見学参加者からは異口同音に、感嘆の言葉がもれた。

現場見学の後、社長から同社の5S活動に対する取組みについて説明を受けた。卓越した経営感覚や優れた独自の創意工夫があった。同社の5Sの対象は「場所」「物」から始まり、いまや「情報」そして「心」へと進化し、深化し続けている。
同社も10年前では、現場も事務所も足の踏み場もない、乱雑で油やほこりにまみれ、ロクに清掃もされない汚い町工場であったと社長は回想する。「これではいけない」2代目を継いだ現社長の強い思いが会社変革の出発点だった。その中で特に感銘を受けたのは、「徹すること」と「続けること」であった。経営理念・経営方針の中に、5S活動を位置づけ、社長が率先垂範、全員参加で、実践することを 何年も継続している。

5Sを導入しようとする中小企業は多い、しかし5Sを定着させ何年にもわたって継続できている中小企業はまれであると思う。挫折や中途半端に終わる例が少なくない。一旦やると決めたことを、会社のすべてに、自ら先頭に立って、社員全員に徹底させ、納得させ、定着させ継続させていく、経営トップの強い意志・情熱がないと成功しないのだということを目の当たりにし、しみじみと実感した。このことは5Sに限らず、経営全般に通じる経営の要諦だと思う。社長は「5Sの真の目的は活動を通じて社員の価値観を共にし、何事にも全社一丸となって挑戦する気持ちを育てることにある」と語った。心にしみる一言だった。


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