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「はやぶさ」開発責任者の講演を聞いて

11.12.26
SAVS会員 桂経営研究所 代表 桂 彰

12/22に神戸で「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーを担当されていた川口教授の講演を聞く機会があった。
「はやぶさ」は小惑星イトカワから沢山の微粒子を持ち帰り、現在、分析がなされているようであるが、隕石と同質の成分とのことである。

川口教授は最初に話された苦労話は、大気圏に突入するときにカプセルは3000度程度の高熱になり、うまくパラシュートが開くかどうかだった。あらかじめ地上では実験できず、7年間の宇宙飛行で機器の劣化も懸念され、ぶっつけ本番であったが、パラシュートがうまく開いてくれた時が一番うれしかったとのことである。

小惑星イトカワは地球から3億kmの距離にあり、直径500mのピーナツ状小惑星で、この惑星に軟着陸した技術はアメリカのNASAでもできないとのことである。どれほど凄いかの実感が湧いてこないが、3km先にある5ミクロンの微粒子を探し出し、その微粒子上の特定ポイントに降りるぐらいの難しさである。 これを実現するには、衛星まで電波でも片道17〜18分掛かるため、地球から遠隔操作が不可能であり、衛星に自律判断・制御機能をもたせたとのことである。さらにデータの圧縮技術、信号のノイズ対策技術の開発や微少光でも発電できる太陽光パネルなどの開発が必要であった。

最も苦労されたのは、途中で電波が途切れ、行方不明になったり、姿勢制御不能となり、帰還までに7年も要したこと。その中でもイトカワに無事着陸後、地球に帰還しようとしたとき4つのイオンエンジンの内3つが故障で停止し、残りの1つも出力不足で、とても地球に帰還できる状態ではなかった。その解決策として、地球から指令を送り、各々のエンジンのイオン源と中和器を分離し、別な組合せでエンジンの作動に成功したことである。
川口教授は、今回の成功は、非常に運がよかっただけと、謙遜されているが、福島原発の事故にも触れられ、あの原発は人間がすぐ傍で確認も、修理もできる。しかしながら、3億km離れた宇宙では、まったく確認も修理もできない世界である。そのため、あらゆるトラブルに対して対策を講じており、数々の想定外のトラブルにもうまく対応できたとのことである。

福島原発の事故は、想定外の津波が原因と片づけてしまっているが、再発防止には「はやぶさ」の想定外のトラブルにもうまく対応してきた宇宙技術とリスク対策を学ぶ必要があると強く感じる。


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