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海外における診断指導活動

12.06.24
SAVS会員 深谷経営事務所 代表 深谷 修
1997 年以来、国際協力機構(JICA)の診断指導を含む開発調査事業等の一環としてメキシコ、インドネシア、マレーシア等6カ国において診断指導を行ってきた。どこの国でもカウンターパート(指導する相手 CP と略記)は政府機関の職員であり、民間会社を経験してきた職員は少なかった。

(1)2007 年におおいて、インドネシアでは“診断士”の座学研修を受けて試験には合格しているが、診断の実習は実施されていなかった。
その試験は日本のように厳しい選抜試験ではなく、まじめに勉強していればほとんどの人が合格するようなものである。小生は座学研修には参加していなかったが、続いて実施された診断指導から参加した。現地の診断士と一緒に製造業を 40 の社ほど巡回しその中からモデル企業を 10 社選定した。業種は機械加工、治具製造、プラスチック成形、プレス板金加工、ゴム成形、紡織、鋳造などであり、そのモデル企業を巡回し、テーマを決めて診断指導(特にカイゼン)を行った。
テーマとしては品質の向上、段取り時間の削減、5S の実施、原価計算(特に賃率の計算方法の指導)である。モデル企業の選定にあたっては、規模の比較的大きな従業員 100人程度から数人の会社まで、多様であった。モデル企業を選定したのは CP である。
自動車業界の下請けは比較的熱心に取り組んだが、紡織業や鋳物製造業(機械加工を含む)の会社はテーマの取り組み、実践の達成度合いは低かった。

(2)2010年〜2011 年におけるマレーシアでは、中小企業公社の職員に対する診断士養成の研修、実務補修の指導を実施した。
日本と同様の中小企業診断士のための研修を実施し、その後に企業(主に製造業)に出向き診断実習を実施した。
そのとき指導員(日本人中小企業診断士 3名)1人として参加した。研修は10 名(5 名が 1 組で企業診断)の研修生を対象にして行われ、内容は経営管理(3日)、財務管理(3日)、マーケティング(3日)、生産管理(7日)、税務管理(現地人講師が3日間実施)であり、理解度の試験は実施するが、全部の人が合格するようになっている。
日本の診断士のような厳しさにとぼしいように思う。小生は生産管理の研修(講義と演習)、診断実習の指導員を担当したが、製造業についての知識、経験がある人は少なかった。
診断実習先の企業としては訪問先の主なものは、レンガ製造、水道メーターの組立、プラスチック袋の製造、配電盤製造と据付工事、デザインと印刷、薬品、化粧品製造、自動車会社向け治具、ラックなどの製造、ハムバーグなどの食品製造などの小規模企業であった。

マレーシアの診断士はわれわれの研修を受けてからの自分で勉強する期間が短く、研修内容を十分には理解していないし、民間企業出身者以外は会社に在籍していれば理解できることでも理解度が低い。
比較的簡単な机上の診断演習問題を実施してみたが、一般論を書くことが多く問題の本質を答える人は少なかった。
診断の結果を企業の幹部に報告をするときのパワーポイントの内容はうまく装飾を使ってまとめ、プレゼンテーション(記述は英語)も全般的に上手である。
企業の経営者の中には英語が不得意の人がいるので、プレゼンテーションはマレー語を使うことが多い。
研修生は英語を小学校から勉強しているので達者であるが、数学、理科に弱いということがある。
原価計算、損益分岐点の計算など計算が遅いと思う。

企業によっては管理技術より固有技術の相談を受けることがある。
固有技術(機械、電子電気、化学)のわかる診断士を養成すべきと考える。
しかし、現状では診断士は工業知識(日本の中小企業診断士の旧制度で実施されていたような)研修は行われていない。

今後、研修を受けた中小企業公社の職員のうち適任者がチームを作り中小企業を診断指導するには、更なる努力と経験が必要である。



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