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また首相が変わる

12.11.28
SAVS会員 関マネジメントオフィス代表 関 康徳
野田首相が衆議院を解散し、来月 16 日に総選挙が行われる。目下の情勢では、民主党が過半数を獲得することはおろか第 1 党になることも困難なようだ。その結果、またも日本の首相が変わることになる。

思えば、2005 年に当時の小泉首相が郵政民営化法案を通すがために衆議院を解散、総選挙で圧勝した後、自民党政権の間で安倍、福田、麻生と 3 人もの首相が選挙を経ずしてほぼ1 年ごとに交代した。原因はいろいろあるだろうが、ねじれ国会の下、思うように政権運営ができなかったことに尽きる。
そして、2009 年 8 月、民主党の圧勝で政権交代が実現、鳩山内閣が誕生した。強力な内閣と政権運営で長続きするかと思われたのに、沖縄普天間基地の移転問題でつまずき、僅か 9 カ月余りで退陣、その後を担った管首相も参院選前に唐突に消費税増税を唱え、参院選に惨敗、昨年の東日本大震災の津波被害で生じた福島原発破損の対応に失敗し、 1 年余りで交代、民主党政権下でも選挙を経ずに 2 年の間に 3 人の首相交代があった。そして、何も決められない政治は、日本経済を衰退させ、世界の主要国の信頼も失った。

なぜ、こうも簡単に選挙で洗礼されることなく首相が交代できるのか、また、衆議院議員の任期は4 年あるのに、首相の解散の一声で、任期途中で議員の身分を奪われるのかを考えてみた。前者は、憲法第 67 条により、「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」と規定されている。その指名権は衆議院が参議院より優先されるため、衆議院で過半数を握っている党の代表が,首相(内閣総理大臣)に選ばれる。
また、内閣の総辞職については、第 69 条で「衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決した時は、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職しなければならない」と規定されており、さらに第 70 条には「内閣総理大臣が欠けた時」を規定している。「内閣総理大臣が欠けた時」とは、例えば、小渕首相が病気で急逝されたことがあったが、そのような事態と解釈してよいだろう。決して、首相が、勝手に自分の都合で首相を辞めてもよいとは解釈できない。

過去の衆議院の解散は、首相の専断特権として解散権を行使してきたが、第 69 条に規定するように、「衆議院において内閣不信任が決議」されたときか、「信任案が否決」されたときしか規定されていない。このことは、このどちらかが決議されたときに、内閣総辞職に代えて、国民に信を問うために衆議院を解散できると解するのが常識である。現状の首相による解散は、拡大解釈をしていると考えられる。

私の考えは、衆議院議員は 4 年間の任期を全うしてしっかり仕事をして欲しいということにある。内閣においてもしかりで、首相は自分の信じる政策を、責任を持って 4 年間遂行してもらいたい。そうすれば、もう少しましな政治をしてもらえると考える。これを実現するためには、衆議院の解散は、憲法に定めるように、内閣不信任案決議されるか、信任案が否決されたときに限りできることにし、総理大臣に事故があった時や、欠けたとき、更に、この 7年間のように、首相がその職を投げ出した形で内閣が総辞職するときは、与党の中で首相をたらい回しで決めるのでなく、首相の座を野党に譲ることにすれば、1 年程度で首相が交代するような事態はなくせると考えるが、うがちすぎだろうか。総選挙を前にして、いろいろと考える昨今である。


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