本文へスキップ

中小企業の方々の経営のお悩みをご一緒に解決します!

随想の広場

研究会メンバーによる随想をお楽しみください。

アベノミクス効果で、賃金の上昇・雇用の安定は実現できるか

13.02.15
SAVS会員  エノモト経営研究所 代表 榎本直行

昨年の暮にぼんやりとテレビを見ていたら、ある若手エコノミストが、“景気回復・強い日本づくりは、物価上昇(デフレ脱却) →経済成長 →企業収益の回復 →賃金上昇・雇用安定といったサイクルを回すのではなく、まず賃金上昇が前提で、その効果である消費の回復を待って、経済成長・企業業績の回復を目指すべきだ。”と解説していた。その時は腑に落ちない感じであったが、よく考えれば、そのエコノミストは一つの理想を言っているのであって、その勘違いははなはだしいところである。

いわゆるアベノミクスといわれる経済・財政政策を掲げ、新政権をスタートさせた安倍総理は、デフレ脱却のため物価上昇目標2%に向かって施策を講じている。つまりそれにより円高を是正し、輸出競争力を復活させてわが国の経済成長を果たし、景気回復、企業業績の確保、賃金の上昇・雇用の安定というサイクルを経て国民生活の活力を回復させる皮算用である。果たして、例えば物価が2%上がると、賃金が上昇に転じ、雇用も安定するであろうか。

一時的に企業業績が回復すれば企業余力は出てくるとは思われるが、企業業績が今まで長く低迷していた分、経営者の将来への不安は払拭できず、当面は内部蓄積が進むであろう。
非正規社員が3分の1、完全失業率が4.2%(H24 年 12 月現在)、また多くの社内失業者を抱えるといった雇用状況の回復もなかなか進まないであろう。家計において、賃金の伸び悩みやローン負担増により将来に不安がある限り貯蓄に励み、消費にはなかなか向かないのと同様、企業経営者が安定的な収益確保に自信が持てる状況にならない限り、賃金上昇まで手が回らないことが予想される。
“賃上げを呼び水にして、景気を好循環にもっていくべき”という連合の要求に対し、“わが国はエネルギーコスト、TPPなどの諸問題を抱えている、ということを置いておいて、給与だけ先に上げたら景気が良くなるというのはあまりにも無責任だ”との経団連の答えの方が筋が通っていると思われる。
「賃金の上昇・雇用の安定は実現できるか」の答えは、力強い企業業績の回復および将来見通し次第であろう。


随想の広場 一覧へ戻る