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随想の広場

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地球儀

18.10.25
SAVS会員  上住技術・経営企画代表 上住好章

ふとしたきっかけから、地球儀の専門店があることを知りました。場所は東京の人形町です。 会社勤めの頃は技術者としてプラントの輸出に携わって、世界中(とまでは行きませんが5大陸のうち4大陸)に行き来し、パスポートの出入国のスタンプも130回を超えるほどともなれば、今までの来し方を振り返るには格好の道具と言えるでしょう。また、これからのグローバル時代、グローブ(地球儀) の一つもないと、お客様との対話等、仕事にも差し支える可能性が出て来るかも知れません。

ということで、仕事で東京へ行ったついでにその地球儀専門店に立ち寄り、二球儀を買い求めました。地球と月がペアになって置かれ、内部に照明もあり、照明が点灯すると夜空の星座が浮かび上がるという優れものです。子供の頃空を仰いで月や星を眺めた記憶も思い起こします。

欧州や米国へ行くときに大圏航路という最も距離の短いルートを通ることは、頭ではわかっていても、それを実感できることとはありません。しかし地球儀があれば2点間を糸で結べばなるほどその通りになっていることが実感できます。また、米国とカナダとの国境のように、人為的、幾何学的に定められた国境が如何に不自然なものかも体感できます。

この地球儀には2点間の距離を地球儀上で測れるフレキシブルな定規が付属しています。例えば北極から赤道までは1万kmになります。もともとメートル法でこのように決めたからそうなるのですが、それが実感できます。これからのグローバル時代には、相手の国との距離感は地球儀上に定規を当てて、その距離を測ることから始まるようになるかもしれません。

大阪からニューヨークまでこの定規で距離を測ると約9,000kmになりますが、その経路はロシア領内に深く食い込み、カムチャツカ半島の西側を通ります。一方東京からニューヨークまでの経路はカムチャツカ半島を横切ります。東京からの経路は少し南にずらせばロシア領内を通らずにすみます。このような事情が、大阪からニューヨークまでの直行便が定着しない理由かも知れません。

一方、目をヨーロッパに転ずると、パリと大阪間の最短距離は8,000km程度なのでニューヨークよりも近いのですが、その経路は広大なロシア領内のみでなく、中国東北部、北朝鮮、韓国の上空を通ります。これは出来ませんので日本から出る場合は、まず佐渡島の上空を通り、一路北へ進み、沿海州からロシア領内に入った後ひたすら西へ進む、という大回りの経路を取ります。一般的にニューヨークへ行くよりパリへ行く方が航空運賃が高いのは、ロシア上空の通行料に加えて、このような経路の事情があるのかもしれません。

ただしこれは日系の航空会社の場合で、ヨーロッパ系の場合は少し違うようです。6年前にフランクフルトから大阪へルフトハンザ航空で帰ったことがありましたが、 ふと目を覚ましてフライトマップを見ると北京の近くを飛んでいたので驚きました。しかし地球儀上で最短経路を見ると、ロシアから中国東北部の街、瀋陽を通って北朝鮮、韓国を経由しています。さすがに北朝鮮上空は通らないにしても、最短経路に近いルートを取っているのがわかります。

ドイツが官民あげて推進する第4次産業革命(インダストリー4.0)に呼応して、中国ではメードインチャイナ2025(中国制造2025)が取り進められており、技術的にはドイツの強い影響下にあることと、国対国としての良好な関係が、このような航空路にも現れている、と見るのは穿ち過ぎでしょうか?

このような新しい切り口からの発想が、私どものお客様や関係先との対話を豊かで実りあるものとする契機となることを期待しています。


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